2014年に発足し、「和食“鍋焼うどん”」×「伝統芸能“落語”」の魅力を多くの方々に伝達していくことを目指した文化啓発活動である『キンレイ心染プロジェクト』のインタビュー企画です。心染プロジェクトでは、落語を学ぶ大学生(落語研究会)のイベントや公演のサポートを行っています。コロナ禍で活動が制限されているなか、試行錯誤を繰り返しながら落語に取り組む大学生を応援します。
インタビュアーは心染プロジェクト卒業後、プロの漫才コンビとして芸能事務所(株式会社タイタン)に所属し活躍している「まんじゅう大帝国」の田中さん・竹内さんです。
竹内:今回のインタビューはこれまでの心染プロジェクト卒業生へのインタビューから趣を変えてお届けします。題して「まんじゅう大帝国のおちけん部室訪問!」です!落研のみんなの今をお届けします!
田中:新しい企画ってこと?
竹内:そうそう。
田中:第一回はどこの落研?
竹内:あなたの母校です。東京理科大学の落研です。
田中:おっ、僕中退だけど、母校って言っていいの?
竹内:少しでも在籍していれば、それはもう母校です!
田中:自信満々に変な事言うな!大学から離れて5年も経つからなぁ。人づてに聞いた話だと今部員が3人しかいないらしいけど…。
~部員が3人!?希望の1年生は!?~
理科大落研:よろしくお願いします!
田中:本当に3人だ!
竹内:選りすぐりの3人だね。
田中:僕とは初めましてだよね?名前と学年を教えてもらってもいい?
松本:4年生の松本光一(高座名:神楽家夏野(かぐらや なつの))です。
※以下文中では、夏野。松本=夏野
田中:ん?夏野か!マスクでわからなかった。あれ?4年生だっけ?
松本:はい。
田中:君の学年が4年生か。
松本:あ、でも、3回目の4年生です。
田中:そういうことか!何してんだ!
松本:本当は引退しているんですけど、部員が少ないのでまだまだ現役です。
田中:ある意味頼もしいけど…。隣の人は夏野の後輩かな?
浅田:4年生の浅田九摩(きゅうま)です。
田中:んん?聞いたことある声だな。テルル?
浅田:そうです。有機亭(ゆうきてい)テルルです。
※以下文中では、テルル。浅田=テルル
田中:ちゃんと話したことはないけど、落語は何度か見たことあるよ。
浅田:文化祭にいらしてくれましたね。
田中:うん。3人中2人が4年生ってことは…。不安になってきたな。頼むよ!
クラッセン:1年生のクラッセンと申します!!
田中:安心したわ! 1年生がいるじゃない。あれ?クラッセン?どゆこと?
クラッセン:オーストラリア人で本名をクラッセンと申します。
田中;そういうことか!知らない間にすごいことになっちゃったな!
竹内:理科大落研の活動はどんな感じ?
浅田:コロナウイルスの影響で以前のような活動はできず…。稽古も休止状態が続いていますね。
竹内:てことは、クラッセン君はまだ落語できていないの?
クラッセン:そうですね…。高座名もいただけていないです。
田中:思っていた以上に深刻だな。クラッセン君は新1年生?
クラッセン:実は2回目の1年生です!
竹内:ちょっと待って。理科大の進級制度ってどうなってるの?
田中:理科大は“日本一進級が難しい大学”と言われていて、僕の時は物理部の1年生が半分留年していたからね。ハチャメチャに難しいんだよね。1年生の期末試験をパスできないと1年生をやり直し。進級できたら4年生までは進級できるのよ。ただ、卒研に合格しないと卒業できない。僕は1年目の期末試験はパスしたけど、単位数は1年生分くらいしか取らずに中退しちゃった(笑)。
~期待の星! 1年生のクラッセン君がすごい!~
竹内:理科大には理数系を研究するために入ったと思うんだけど、3人はどうして落研に入ったの?理科大で学ぶ人が「落研に入ろう!」って、珍しい気がして。
松本:僕はもともとお笑いが好きだったので落研に入りました。理科大のお笑いのサークルは落研だけなので。
浅田:私は高校3年生の時に古今亭志ん朝師匠の落語を聴いて、「落語をやってみよう」と思って入りました。
竹内:クラッセン君は?
クラッセン:落語が好きだったので!
田中:最初から気になっていたんだけど、クラッセン君はいつから日本にいるの?
クラッセン:日本に来たのは、理科大のセンター試験を受けた時です。東京で生まれではあるのですが。
まんじゅう:ええ!?
クラッセン:一般受験で入学しました!
田中:いや!それもすごいけど!日本語が達者過ぎる。母語は英語になるの?
クラッセン:両親は英語を話していたので、そうなりますね。ただ日本人学校のようなところに通ってはいたので。
田中:そうなんだ。両親がオーストラリアの人で日本語系の学校に通っていた経緯って聞いても良い?もともと日本語には慣れ親しんでいたの?
クラッセン:あ、いや、オーストラリアとブラジルのハーフです。紆余曲折あって日本語系の学校に通っていました。
田中:それで理科大に入って落語が好きで落研に?
クラッセン:そうです!
田中:なるほどね。最初は部員の少なさに面食らったけど、話し聞いたら安心した。頑張ってくれていてめちゃめちゃ嬉しいよ。
竹内:冒頭で活動が制限されているって話しだったけど、新歓活動もできていないのかな?
松本:そうなんです…。
田中:活動できていないんだから新歓もなにもないよね。参ったね。
竹内:順当にいけば、来年3月で松本君と浅田君は卒業してしまうから、クラッセン君一人になってしまうけど。
松本:あ、卒業できるのは、テルルだけですね。
田中:あ!そうなんだ。夏野は大学院に行くの?
松本:いや、留年です。もう数年は大学にいる予定です。
田中:大丈夫か…?三人はそれぞれどの学部なの?
浅田:私は化学を専攻しています。松本先輩は数学、クラッセン君が物理を専攻しています。
竹内:三者三様だね。三人の落研の活動はこれからどうしたらいいだろうね。
松本:そもそも落語会を開けないので。開けたとしても、大々的な告知もできないですし、大学にバレて活動停止とかになっても…。
田中:そうだよなあ。学祭とか公演とか、落語を披露する場が世情に阻まれているのはかわいそうだね。クラッセン君の初高座が遠のくばかりだね。でも学年的にはまだ1年生だからあと4年間はいるか。
クラッセン:そうですね。ただ、いつ日本から強制退去させられてもおかしくない成績なので…。卒業するつもりではいますが、成績があまりにもひどいと「でてけ!」ってなるそうです(笑)。
まんじゅう:(笑)。
竹内:一個一個のエピソードが強いなあ。キンレイ心染プロジェクトには参加しているの?今は理科大落研の運営が大変だと思うけど。
浅田:そうですね…。自分たちのことで手一杯なのが現状です。ただ、取り組みは知っています。去年の夏に関東落研連合とオンラインイベントされていましたよね。お二人も出演されていて、僕も観ました!
竹内:「落研の夏フェス」だね。あれは無観客だったけど、出番前の出演者が観ていたりして、少しだけど人前で落語が出来ていたよ。心染プロジェクトの取り組みに三人が参加をして、他の落研との交流が増えていけば、活発になって、新歓に繋がってくるかも。
田中:また、「落研の夏フェス」みたいな企画があったら、クラッセン君を出演させてあげたいね。そういえば、部室には入れるの?
松本:入れないです。授業もリモートが多いですし。
田中:手入れが必要な備品が多いから心配だなぁ。八方ふさがりだね。「落研の活動を制限するな!」ってデモを起こすわけにもいかないし(笑)。こればっかりはもう少しの我慢としか言えないな。ただ、活動再開したら連絡して。稽古に行くよ!
松本:ありがとうございます!
田中:落語の素人から素人に言う事だから、大したアドバイスにはならないけど。僕にとって理科大落研は大切な場所なので協力できることがあれば、何でも言って!理科大落研を守ろうとしてくれている3人を応援するよ!
~理科大落研の“らしさ”~
竹内:理科大落研が他の落研と違う特長とかってあるの?
浅田:内気だったり、口下手な人が多いんですけど、理屈っぽくてマニアックなことが好きな人が多いので、勝手がわかると集中して没頭できる人が多いかもしれないです。
田中:そういうのが理科大落研の“らしさ”だね。入った時は上手くなくても4年間、落語を研究して、一般の人が見ても笑いをとれるくらい成長する人が多いんだよね。そういう目で見ると結構魅力的な部活だよね。変な話、日芸(日本大学芸術学部)とか他の落研に「落語くらいは勝ってやろう!」って思いがあって、僕は理科大落研だから頑張れたよ。授業行かずに落語の練習をしていたから、理科大生としてはダメな例ではあるんだけど。芸人になれたから許して…(笑)。
松本:どんな部員も見捨てないのも特長かもしれません。励ましてくれるというか。落語が上手い人はそのまま続けていけばいいし、そうじゃない人は部員みんなで頑張っていくので、そういうところは理科大落研の良いところだと思います。
田中:うんうん。三人は理科大落研に入って良かったことってある?
浅田:人前で話す時に緊張しなくなりました。話すことを矯正するのに落語ほど有能なコンテンツってないと思います。
松本:理科大で教職を目指す人は落研に入ると良いかもしれないですね。人前で話すための技術とか。「東京理科大で落語??」って思われるかもしれないですけど、理科大と落研って相性がいいかも。実際に先生になった先輩もいますし。あとは友達が増えたのも良かったです。他大の落研の人とか。
田中:他大の落研の人って優しくて、誰でも受け入れてくれるからね。クラッセン君にもその楽しさを知って欲しいね。そういえば、夏野はお笑いが好きって言っていたけど芸人になったりしないよね?
松本:ならないです!
田中:良かった!君がとかじゃなくて、一般的にならない方が良いよ。就職した方が人間的な幸せが多いと思うし。ずーっと理科大生みたいな生活嫌でしょ?僕、中退してから5年くらいずっとジリ貧だから(笑)。
松本:お二人でもそうなんですか!?
田中:僕らなんか全然だよ!
~キンレイの商品は研究対象になりますね!~
竹内:暗い話になりそうだから、話題を変えます!三人は麺類好き?
田中:いきなりどうした?
竹内:いや、キンレイさんの商品のこと知っているかなあって。
松本:「鍋焼うどん」美味しいですよね。
竹内:おっ!商品をたくさん送ります。
田中:お前の権限じゃないだろ。
竹内:売るほどあるよ!
田中:お前が言うな!ああ、それそれ。「お水がいらない 尾道ラーメン」かな?スープ・麺・具材の順番で凍結されていているから最初にスープが溶けて、次に麺が溶けていくから、麺が伸びないっていう。鍋に入れるだけで一品出来るこの技術はキンレイだけのものなんだよ。
浅田:このキンレイさんの冷凍技術って化学や物理を応用されているかもしれないです。それぞれの素材の融点、密度、結晶形を分類、分析して解凍した時に一番美味しいスープ・麺・具材になる様、計算され尽くしたものだと思います。誰が作っても同じ味わいになるよう設計されているのは応用化学を学んでいる身として、興味があります。
竹内:すげー!キンレイさんの開発の方々との対談した方が面白くなるんじゃない!?理科大生と食品企業とのトーク!ぜひ心染プロジェクトに参加して欲しいね。
浅田:ありがとうございます。お二人も参加されていたんですよね?
田中:うん。自分たちで落語をやる場を作るのが難しかったら、心染プロジェクトを頼っても良いし。また理科大から参加してくれたら嬉しいかな。僕らのことも色々頼ったら良いよ!なくなったら悲しいもん。
~クラッセン君に高座名を!~
浅田:はい!早速、お願いがあるのですが、まだクラッセン君の高座名がなく…。
田中:なるほど!皆まで申すな(笑)。
竹内:理科大落研には決まった亭号ってあるの?屋号みたいな。
浅田:“神楽家(かぐらや)” と化学科だったら“有機亭(ゆうきてい)”があります。ただマストではないです。
田中:僕が“六花亭空道(ろっかてい そらみち)”だったから、何でも良いと思うよ。
竹内:わくわくしてきたな。好きな有名人とか偉人はいる?
クラッセン:ニュートンさんは好きですね。
田中:ニュートンに“さん”付けする人に初めて会ったよ(笑)。ニュートンの名前をそのまま付けるのは仰々しいか。
竹内:そうだなぁ。クラッセン君が海外にいたことは魅力の一つだから、その辺を盛り込みたいね。オーストラリアに住んでいたんだっけ?
クラッセン:いや、シンガポールです。
田中:マーライオンくらいしか知っている物がないな(笑)。○○亭マーライオンは?
竹内:字面をどうするかだね。
松本:あえてそのままにするのはどうですか?神楽家は付けて理科大落研の将来を担ってもらって。
田中:“神楽家マーライオン”は良いかもね。夏野とテルルは考えていた候補あったりしたの?
松本:クラッセン君はブラジルとオーストラリアと日本に関わりがあるのと、シンガポールと香港に住んでいたこともあるので、その5つの国を盛り込めたら、と思っていました。
クラッセン:ブラジルにはそんなに馴染みがないですね。色々あり…。
田中:そのまま文字に起こしたら大変なことだらけだけど!それをめちゃくちゃ明るく話してくれるんだよね(笑)。国籍はオーストラリア?
クラッセン:そうです。今は就学ビザで日本にいます。ちなみにセンター試験は観光ビザで受けました!
竹内:良い話だなぁ(笑)。ビザ取って理科大に入って、落研にも入っているって良いエピソードだね。
田中:でも、“神楽家マーライオン”良いなぁ。
竹内:そしたら、“マーライオン”の漢字どうする?
田中:あえてカタカナは?マー君って呼べるし、親しみやすいかも。例えばパリの人が“エッフェル塔”を名乗っていたら、お高くとまっているなって思うけど、マーライオンはいじれる可愛さがある。クラッセン君は実物を見たことある?
クラッセン:実は複数あって、一番有名なやつが一番小さいんですよね(笑)。一番大きい方はこの前解体されたとか、されていないとか(笑)。
田中:なんだよ(笑)。そのままエピソードに使えるじゃん。
竹内:それじゃあ、神楽家マーライオンで決定かな。表記は現役の三人に任せるよ。
松本:んー?クラッセン君はどれがいい?
クラッセン:全部カタカナで“マーライオン”が良いです。
松本:本人の意思を尊重します。神楽家マーライオンでお願いします!
田中:決まったね。これからの理科大落研を宜しく頼んだ! 今度、落研の運営に余力が出てきたら、心染プロジェクトの活動にも参加してより活発になると嬉しいかな。理科大落研ののぼりがあるので、いつでも参加できるし!じゃあ、また何かあったらいつでも呼んでちょうだい!
【東京理科大学 プロフィール】
東京理科大学唯一のお笑いサークル。主に神楽坂キャンパスにて活動を行っている。部室は3号館地下3B10。見学希望の方や公演依頼はお気軽にHPに載っている渉外へ!
・部員募集中!!
東京理科大学落語研究会は、いつだって部員を募集中です。あなたが理科大生でなかろうと、ひいては大学生でなかろうと構いません。「へえ、じゃあ、ためしに入ってみようかな」思い立ったが吉日です。ご連絡ください。
東京理科大学落語研究会・渉外:浅田
・現役生3人からのコメント:
「どなたでも気軽にご連絡下さい。」(浅田君)
「部員は三人しか居ませんが僕は少なくとも、もう1年は居ますのでこれを読んでくれた理科大生の入部お待ちしています!」(松本君)
「東京理科大を母校と胸を張って言えるよう精進します!」(クラッセン君)
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【インタビュアー:まんじゅう大帝国 略歴】
株式会社タイタン所属の漫才コンビ。2016年6月コンビ結成。2017年4月デビュー。大学時代は互いに落語研究会に所属し、学生落語の全国大会で優秀な成績を残す。2017年4月に株式会社タイタンに所属しデビュー。フジテレビ系『ENGEIグランドスラムLIVE』『ネタパレ』などに出演し注目を集める。
【その他、受賞歴等】
・国立演芸場 令和元年度「花形演芸大賞」 銀賞受賞
・フジテレビ「ENGEIグランドスラム」「ネタパレ」
・WEB CM パイロットコーポレーション フリクション「ネタ帳」
・MV ゼスプリゴールドキウイ「アゲリシャス」
・TBSラジオ「マイナビラフターナイト」月間チャンピオン
(2017年6月/2018年11月)
・第3回未完成映画予告編大賞「MI-CAN男優賞」(竹内一希)
・2020年1月29日より、初のDVD「詰め合わせ」発売。
・2020年10月7日より、第一回単独公演DVD 「私の番です。たしかにね。」発売。
・竹内一希さん主演映画『実りゆく』が2020年10月9日(金)に新宿武蔵野館ほか
全国の上映館で公開。「第63回ブルーリボン賞」作品賞にノミネート。
・初の単行本『笑いの学校』が2020年12月19日(土)に河出書房新社より発売。
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